ロボットは東大に入れるか。Todai Robot Project

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実世界へのグラウンディングに挑む理科問題への解答

理科,特に物理の問題を解くためには,自然言語で記述された物理的な状況を理解し,将来的にどのようなイベントが展開して行くかという予測を行いながら,計算をしたり,理由を述べる必要があり,他の教科とは異なる戦略が求められます.鍵となる技術は大きく分けて二つ,(1)物体の位置関係や拘束条件などの物理状態,および,時系列的に生じるイベントの論理式表現への変換,(2)物理シミュレータを用いた将来予測と自然言語処理の融合になります.
 

物理シミュレーションを用いた曖昧性解消

物理シミュレーションの応用の一つに,自然言語処理における曖昧性解消があります.例えば以下のような問題文を理解することを考えてみましょう.

この文章を人間が読んだ場合,当然のことながら「おもりを離す」とは,「手で持っていたおもりを手から離す」を意味しています.しかし,背景知識や常識を持たない計算機の場合,(1)「手からおもりを離した」(2)「おもりを棒から離した.ただしおもりは手で持ったまま」(3)「おもりを手から離した.同時におもりを棒から離した」という3種類の解釈の可能性があります.従来の自然言語処理ではこれらの3つの可能性から適切な解釈を選択することは困難でしたが,それぞれの場合に将来何が起こるかを物理シミュレーションすることで曖昧性を解消することができます.以下に示すのはそれぞれのケースの物理シミュレーションの結果です.問題文では「棒が回転した」と書かれており,図ではおもりが移動しているので,正しい解釈は(1)であることが分かります.
 

「ロボット」と物理の問題の関係

このプロジェクトは「東大に入れるロボット」を創ることを目的としていますが,現状では実際に二足歩行で試験会場に歩いて行き,指で鉛筆を握って文字を書くことは目指していません.人工頭脳のプログラムという意味での「ロボット」です.しかしながら,現実世界で人間からの自然言語による指示を受けながら活動するロボットにとって,ここで紹介したような物理問題を解く技術は極めて重要になってきます.現実世界で次の瞬間何が起こるのかを予測しつつ,人間からの指示の理解を行い,矛盾が無いように自分の行動を決定する必要があるからです.このような意味からも,理科の問題を解くことが「ロボット」の実現に最も関連が深いとも言えるかも知れません.